2011年10月
議会基本条例に期待されるべきもの
この「議会基本条例」を制定しようという議論を始めるにあたっては、まず、あくまで「議員基本条例」ではなく「議会基本条例」であることが再確認されるべきである。つまり、議員が個々独立していることは尊重しつつも、憲法93条(地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。)に「議事機関」と規定された地方議会の、ほんらい期待されているあり方を改めて問い、議事機関としての機能を強化するための条例を作るという立場に立つべきである。
過去制定されてきた「議会基本条例」の中は、法の規定を超えて議会のあり方を美辞麗句で夢物語のように謳うものも少なくない。しかし、条例はあくまで上位法に基づいて制定されるべきものである。また、現実に「議会」が、法の期待した職責を果たしているとは言いがたい情況にあることを鑑みても、法の趣旨を逸脱したようなものではなく、改めて法の期待した「議会」という機関が、正常にその機能を発揮するための条例として制定されるべきなのである。
議員に、言論の自由や、平等の原則、ひとり一人がそれぞれの支持を得て議員となっている正当性があることじたいは尊重・保証されるべきである。
しかし、二元代表制に期待される首長と議会の相互牽制を発揮するためには、議会として一致して議事活動をし、首長以下執行機関との間に適切な緊張感のある関係を築くことが必要である。憲法の記述上も「議会を設置する」という規定が、議員の選挙に関する規定より先んじて記述されていることからも、「議員」の存在より「機関としての議会」の存在こそが先に存在していると読み取るべきである。
そのために必要なのは、相互の討議を通じて議会としての合意形成を図ることであり、その結果集約した意思を踏まえて執行機関に対して提言や政策提案等を行っていくことである。そして、そのことによって、地方自治法第1条の2に謳われた「住民の福祉の増進を図る」という地方公共団体の使命を実現することこそが議会の行動原理でなくてはならない。
それぞれの議員がばらばらに存在するのではなく、あくまで議事機関の一員として規律と責任を持って行動し、住民の福祉の増進を図ることを求める条例である必要がある。そのため、以下の趣旨を規定する条文は必須であると考える。
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・議員が、一部団体及び地域の代表ではなく、西宮の住民全体の福祉の増進を目的として活動することを規定する条文
・議員が、それぞれの独立した信条や政策に基づきつつも、統一された機関としての議会の規律に従うべきであることを規定する条文
・法や条例や各種申し合わせ事項、議長や委員長の議事進行、会派としての規律などに厳格に従うべきであることを規定する条文
・議決とそれによってもたらされる住民への影響に関して説明責任を果たすことを規定する条文
・議会全体としての合意形成の必要性に鑑み、全会一致にならなかった場合には、議案のみならず機動的に多数決をとることによって議会としての意思を明確にすることを規定する条文
・首長に対する牽制機関として機動的に存在するために、効率的な運営を心懸けることを規定する条文
・議員提案の条例の議決に基づいて執行責任が生じた場合に生じうる政治的責任について規定する条文 |
そもそも地方議会には「与党・野党」は存在しない。慣例的に予算に対する賛否で「与党・野党」を区別することもあるが、それは正式なものではない。二元代表制においては、議会に対して、執行機関への牽制機能が期待されているため、議会全体として野党的機能を有する必要がある。首長が、地方自治法147条において統括代表権を有すると規定されていること(普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。)、地方自治法149条において権限が概括列挙されて広く権限の推定が及ぶとされていること(普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。〜当該普通地方公共団体の事務を執行すること。)など、強力な権限を有している現状であれば、なおさらである。
にもかかわらず、現状は、議案の市長原案可決の割合は全国の地方議会で99%を超え、平成23年6月22日の総務省「地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」の中の「地方自治制度の現状と課題」という箇所でも、「議決権の行使は、本来、最も重要な議会の権限であるが、現実には長の提案を追認しがちである」と公式に指摘されている。これは、全国的に広がる地方議会の存在意義を疑い、「追認機関」と揶揄される議論を意識した指摘であることは顕かである。
地方自治法は昭和22年に制定されている。しかし、それいらい、日本の地方議会は、その法に謳われた職責を果たせてきたとは言えない。このような情況を踏まえると、現在の議会に、あえて「議会基本条例」をつくるのであれば、改めて憲法93条に規定された「議事機関」としての責任と権限を明確化し、その統一した機関としての機能を機動的に発揮するための条例とすべく、議論がなされるべきである。






