■profile
今村岳司/いまむらたけし】
imamura 1972年、西宮市生まれ
西宮市議会議員/3期目
NPO法人ドットジェイピー理事

Copyright © 2005 XDL, All Rights Reserved.

2009年9月

アセットマネジメントについて

序論

1.昨年9月と今年3月の質問で取りあげた課題

 昨年9月の一般質問で、学校施設326棟に関しての今後50年間の修繕・建て替えの総事業費を約1000億円、年平均20億円と試算しました。また、今年3月の代表質問では学校と市営住宅以外の主な建築物117施設の建て替え事業費を総額609億円、年平均10億円と試算しました。いずれも、近い将来予測される莫大な財政需要から目を背ける長期的な視野を欠いた無責任な行政運営に対して警鐘を鳴らすべく、厳しい現実を開陳する意図がありました。

 今回アセットマネジメントに関して取り上げる質問は大きく2点。ひとつは、全庁的なアセットマネジメントを統括する部署を設置するべきではないかという質問、もうひとつは公民館や市民館等の集会施設は集中管理すべきではないかという質問です。


2.アセットマネジメントに必要な2層の考え方

 アセットマネジメントには2層の考え方が必要です。まずはハードじたいを維持保全するための計画的な事業推進の考え方です。庁舎であろうが、公民館であろうが、構造が同じ鉄筋コンクリートであれば、耐用年数はほぼ同じ約65年です。自ずと必要な修繕も同じようなものになってきます。そうであれば、各部署バラバラに施設の維持管理を任せておけば、長期的な視野を欠いた管理をする部署も出てきて、施設の寿命をいたずらに短くしてしまうことにもなりかねません。つまり、施設の維持保全には、部署や施設の特性にかかわらず、普遍的な考え方が必要なのです。
 2つ目としては政策的な判断による事業推進です。今後は耐用年限がくるごとに順次建てていくことや、施設を新規で設置することは、財政的に考えても不可能です。施設の統廃合が必要になってきますし、新たな施設需要があるのであれば、それは既存施設の転用によって対応していかなくてはなりません。そもそもどこの部署でも無駄遣いをしようと思って計画をしているところはありません。だからこそ、いま優先順位を高くすべき施設はどの分野の施設なのかの政策判断をするために、全庁的な施設の状況を把握し、分析力と強い権限を持った意志が全庁の施設政策を統制していくことが必要なのです。

本市のアセットマネジメントを取り巻く課題

1.計画や責任の所在が縦割りになっていて分立しており、鳥瞰できない。

 本市は、耐震改修促進計画も、中長期修繕計画も、市営住宅のアセットマネジメントも、すべてバラバラの部署で管轄しており、総合的な把握や統一的な政策推進が一切なされていません。3月の代表質問におけるその指摘に対しても、「各所管でバラバラにやった方が効率的だと考えている」という驚くべき答弁がありました。

 国のほうでは平成18年6月の行政改革推進法で、国の資産を平成27年度までに、平成17年度末の1/2とする目標を定め、資産保有の必要性の厳格な判断、売却の推進などを規定しています。さらに、昨年から補助金等適正化法22条の運用緩和が内閣府によって決定されたことを受けて、補助対象施設の用途転用が可能になったことから、複合施設化などの総合的な判断が可能になりました。このように、国を挙げて集中的なアセットマネジメントを推進しているにもかかわらず、その大きな流れに全くついて行けていない答弁だといえます。
 一方で、各施設のマネジメントを任されている各所管部署の現場レベルでは、長期的な計画に基づいたアセットマネジメントが必要だという意識が高まっています。しかし、全庁的な方向付けがなされていないことから、それぞれの部署は場当たりな施設改修を手探りでさせられているというのが現状です。各部署は、所管内の個別最適の方法論しか持っていないため、全体最適の発想からの政策推進は不可能です。所管施設同士の統廃合程度しか計画できず、全庁的な視点から不足すると予測される機能の施設や、複合することによって可能な新しい行政サービスの開発などはできません。


2.現実から目を背けている

 さらに悪質なことに、意図的に現実から目を背けようという政策意図もあります。約10年前に総務局施設保全管理課は長期的展望に基づいた整備コストのシミュレーションを企図しています。この時点で政策転換をしていたならば、全国的にも最も先進的なアセットマネジメントをしていたことになるでしょう。しかし、あろうことか、そのシミュレーションの結果から導き出される莫大なコスト数字に目が眩んだ上層部によって、そのシミュレーションは中断・隠蔽された過去があります。


3.都市経営にアセットマネジメントのコストに関する意識が低い

 また、施設のコストの話をするときには、イニシャルコストである建設事業費の話だけで、その施設を長期に亘って維持保全していくための経費、つまりランニングコストの話はほとんどなされることがありません。
 一般的な公民館などでは建設事業費は平米単価約25万円ですが、建物寿命を65年と考えた場合の維持費用は約80万円となり、建ててから壊すまでのトータルライフサイクルコストは建設事業費の4倍くらいになります。こういったことを無視し、建設事業費だけを考えて施設を増やしてきた結果、本市では改築や大規模改修が短期間に集中し、今後の大きな財政負担となることがすでに確定してしまっています。しかも、ここ10年ほどは然るべき時期に修繕がなされていないために、施設の劣化が激しく、かえってコストがかかってしまうことになっています。

全庁的なアセットマネジメントを司る部署が必要

 こういった本市の課題は、長期の財政計画に将来的なアセットマネジメントに関する財政負担が織り込まれていないことが原因です。このようなことから、政策推進、財政計画、管財、営繕の技術を集中した部署を設置し、全庁的なアセットマネジメントを集中して統括させることが必要だと結論づけることができます。

 その部署ではまず、財務や現状の利用状況に関する情報を集約して可視化し、施設白書を作る必要があります。その上で、この部署は行革推進法にいう「資産保有の必要性の厳格な判断、売却の推進」 などを行います。長期的で全庁的な視野にたって、持続可能で効率的な施設整備計画を立案し、その計画に基づいて施設の統廃合を推進し、積極的な用地売却によって整備コストを捻出する必要があります。

集会施設のアセットマネジメント

1.集会施設のアセットマネジメント

 アセットマネジメントの総論に続いて今回取り上げるのは、集会施設のアセットマネジメントに関してのことです。
 ここでいう集会施設は、公民館、地区市民館、共同利用施設に加え、男女共同参画センター、市民交流センター、若竹文化会館、大学交流センター、広田山荘、夙水苑など、貸館営業をしている施設のことを指します。

 これらに関しては、さきの定例会での外部監査法人の意見においても、低い利用率や非効率な設置状況などが課題としてあげられ、今後3年間で「利用率の改善を図ることができない場合などには規模の縮小や施設の統廃合を検討すべき」とありました。


2.市民交流センターの使用停止からみられる「公民館も市民館も同じ」意識

 集会施設のやっかいな点は、公民館・市民館をはじめ、それぞれの所管部署が異なっているということです。
   それらは設置された当時の政策的な機能は別々だったかもしれませんが、利用者にとってはその差異が問題にされていないという現状もあります。今年7月から、半年間の耐震工事によって休館している高松町の市民交流センターの主な利用団体53件に対して対応を電話聞き取りしたところ、有効回答47件のうち近隣の公民館を利用すると答えた団体が14団体、近隣の市民館・共同利用施設を利用すると答えた団体が6件、ウェーブ・大学交流センター・消費生活センターをそれぞれ利用すると答えた団体がそれぞれ4件、2件、1件などとなっております。
 このようなことから、利用者にとっては、これら施設は同様の集会施設として認識されているということがうかがえます。

3.集会施設の状況の可視化

3−1.各施設の情報を一覧、地図にプロット

 これらの示唆をふまえて、市内の集会施設に関して、質問の前段で提案した「施設白書」を作りました。
 施設の名称、主管部署、規模、建築年度、利用率などに加え、各種コストも試算しました。建設費は、国交省の「新営単価」の庁舎関係標準建設単価を参考にして、延べ床面積500平米以上は平米単価22万円、500平米未満は25万円で計算しました。維持費はアセットマネジメント先進市である、八王子市の施設白書に紹介された市民館を参考にして、1年あたりの維持管理経費と施設改修経費の平米単価の合計を1.24万円と算出して計算しました。
■link■集会施設の「施設白書」
■link■集会施設の分布図(PDFファイル・約7.5MB)

3−2.集会施設の分析

 これから容易に把握できることは、まず施設が特定地域に偏在していることです。近隣に類似施設があるなどの非効率が多々あることが把握できます。また、耐用年限がくる時期は25から34年後と、38から46年後に特に集中しており、現在のように無計画に施設整備を続けていては、この時期に莫大な財政支出が要求されることになります。
耐用年限
 このように、全体を一括把握することによって、効率的な施設の統合の計画などもしやすくなります。

3−3.施設統合の提案例

 たとえば、近接し、耐用年限も近い市庭市民館と浜脇公民館と浜脇児童館を統合して、浜脇保育所の土地に合築する場合を試算してみます。市庭市民館はあと26年、浜脇公民館はあと22年、浜脇児童館は27年の耐用年限ですが、これらをそれぞれ建て替えるのではなく、施設を統合するとします。このころにはきっと子供が減りだしている時期でしょうから、浜脇公民館の耐用年限がくる2年前に浜脇児童館と保育所を閉鎖し、その場所に仮称浜脇センターを設置、耐用年限がきたら市庭市民館を閉鎖し、現在の浜脇公民館の土地とともに売却するとします。その場合、土地の売却による収益は約2.8億円、また、2施設の更新をしなくてよくなることによる建設費やランニングコストなどをあわせて支出の軽減は3.9億円、また、最終的に施設が統合されたことによる年間あたりの削減コストは0.2億円と試算されます。これらの費用を施設の新設費用に充てるのであれば財政に負担をかけることもありません。
浜脇統合パターン
 同様に、瓦木公民館、北甲子園口市民館、市民交流センターを瓦木支所の場所に統合した場合は、北甲子園口市民館と市民交流センターの土地売却益で3.5億円、短期的に軽減されるコストで4.3億円、そのあとの年間あたりの削減コストは0.2億円となります。
瓦木統合パターン
 このように、部署をまたがる施設を一元把握することによって、効率的な施設の統廃合の計画が設計しやすくなります。

質問

<全庁的なアセットマネジメントの必要性に関して>

●全庁的なアセットマネジメントを司る部署を設置し、そこに権限を集中すべきではないか。

 そのアセットマネジメント部門に、積極的な施設の統廃合・余剰施設の転売によって、長期的に実現可能な計画を立案させるべきではないか。

●3月に「学校施設の中長期修繕計画策定に向けての作業チームを設置してデータ収集等の作業に着手する」と、教育委員会が答弁したものは、半年でどこまで進捗したのか。

<集会施設の一括管理の必要性に関して>

●各種集会施設のアセットマネジメントは一部署が一括して全庁的に行うべきだと考えられるが、いかがか。
・集会施設は庁舎や学校などと較べると政策的な重要性が劣る。そのため、今後の全庁的な施設マネジメントにおいては、集会施設は最優先で統廃合の対象となるため、全庁的なアセットマネジメントの集約に先んじて、まずは一元化すべき。
・また、管理している部署に施設管理のノウハウが極めて乏しいため、ハードに関する事務は別部署に移管するほうが、各部署の事務負担も軽減できると考える。

●各種集会施設の管理運営は一部署が一括して行うべきだと考えられるが、いかがか。
・ほとんどの利用者にとってこれらの施設は「集会施設」として同義の施設であり、利用者にとっては管理窓口を集約させることによって利便性が高まると考えられる。
・また、今回の調査を通じてわかったのだが、公民館に関しては各館ごとの運営コストの把握すらなされていない。中央公民館という部署は、施設の管理をする能力はないと断じられる。
・現在の施設の所管部署はソフト事業の運営に特化し、ハードの管理・運営はひとつの部署に一元化すべきだと考える。

答弁と意見

<全庁的推進の必要性に関する答弁と意見>

・早期に庁内の関係部局で構成する横断的な組織を立ち上げ、その上で、全庁的なアセットマネジメントを統括する組織のあり方について検討する。

 →来年4月の年度当初には、推進する体制ができていることを強く要望。取り組みにおいては、まずは庁内の温度差をなくすことが必要。その上で、積極的に保有地の売却を行うことによって施設整備の財源を捻出することを推進、耐震推進計画・中長期修繕計画の統一的な計画を作成することが必要である。

<教育委員会の答弁と意見>

・平成21年3月市議会の学校施設中長期修繕計画の方針に基づき平成21年4月より管理部内に事務職1名・技術職3名からなる策定作業チームを設置し、早期の計画策定を目標に作業着手。具体的に、今年度は「策定作業をどのように進めていくか」ということから「現地調査におけるチェック項目や評価方法の確定」等について協議を重ねている。

 →提案から1年経っていることを考えれば、やや遅い。全庁的なプロジェクトチームへの参加によって、先進部局からノウハウの提供をうけ、今年下半期で準備を完了し、来年からは全庁的な取り組みと連動して進めるべきである。

<集会施設の集中管理の必要性に関する答弁と意見>

・公共施設には、それぞれ法律や条例に設置目的が定められるため、現状での各種集会施設の一括管理は困難な状況。

 →補助金適正化法22条の運用緩和を受けて、やっと各種集会施設の統廃合ができるようになった。このことをふまえて、利用実態を精査したうえで、統廃合や用途変更を強力に推進するべきである。

policy一覧へ戻る