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今村岳司/いまむらたけし】
西宮市議会議員/3期目 1972年、西宮市生まれ。 甲陽学院高・京都大法学部卒■浜学園講師・リクルートを経て99年、市議トップ当選(26歳)

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2007年6月

市営住宅という福祉について



「市営住宅という福祉」の6つの問題点。

 市営住宅は、公営住宅法の第1条に「国および地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」と定められていることに基づいて市が行っている、「福祉」としての事業です。
 しかし、その事業には看過できない問題点が多々あります。その問題点を洗い出し、そして、集約することによって課題を明確にし、質問をします。

 市営住宅の第一の問題点は、その維持費です。現状、本市では約10000戸の市営住宅が供給されています。この市営住宅の維持費は今後、大変な問題になりうる課題です。
 住宅の耐用年数は約70年です。しかし、その末期には補修費用がかさむことから、50年で建て替えるとして計算すると、今後50年での計画修繕費予測は368億円、今後50年での建て替え工事費予測は1374億円。今後50年にかかると試算される維持費は1742億円1年あたりに換算すると、34億8千万円に上る大プロジェクトになります。

 第二の問題点は、明らかに適正を超えた供給量です。本市は、昭和24年から平成6年にかけて7300戸の住宅を建設してきました。1年あたり150戸の供給ペースです。
 しかし、震災によって大きな被害を受けたことから、本市は平成7年から平成11年のたった5年間で、2780戸もの被災者向けの復興住宅を建設しました。
 この、震災復興住宅の建設は、老朽住宅の更新という意義を兼ねて行われた事業であるため、以前のペースを大きく上回るペースで供給されたという側面があります。
 しかしながら、それ以降で老朽住宅が廃止されたわけではありません。建て替えによって廃止されるはずの2780戸がそのままになっているため、適正量を大きく超えた供給量になっているのです。
 本市の市営住宅供給量は、平成18年3月末のデータによると、市内全世帯における市営住宅の割合は5.13%(9878戸/192441世帯)となり、全国平均の3.51%をはるかに上回る全国第9位の多さなのです。

 第三の問題点は、使用料の滞納問題です。この問題については先の3月議会の代表質問において取りあげさせていただいたこともありますので、改めて簡単に数字を紹介するに留めさせていただきます。
 本市の市営住宅等使用料に関する滞納額は平成17年度決算ベースで8億6千万円、収納率は72.6%にとどまっています。

 第四の問題点は、住宅扶助との福祉の重複に関する問題です。
 公営住宅の想定している対象者は「住宅に困窮する低額所得者」であると、公営住宅法第1条にあります。この「住宅に困窮する低額所得者」を想定している福祉はもう一つあり、それが生活保護の住宅扶助です。
 本市にはそのいずれかの福祉を受けている者もあれば、双方の福祉を重複して受けている者もあります。平成19年度末現在で入居者の14.8%にあたる1408世帯が住宅扶助をも受けています。この世帯は、同意義の福祉を重複して受けていることになります。

 第五の問題点は、不公平性です。市営住宅の入居者は、平均15倍の抽選によって決定されます。そもそも抽選によって受益者が決まる福祉などあっていいわけがありません。
 両度町や池田町の住宅など、交通の利便性が高く、比較的新しい住宅に関しては、倍率が100倍を超える人気です。このような魅力的な物件なら誰でも入居を希望するのは当然です。このような物件の住環境が、市営住宅以外に住んでいる低所得者の住環境と比較すると充実しすぎているからこそ希望が殺到しているのです。つまり、物件としては、公営住宅法第1条にある「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅」という条件をあまりに上回る高い品質であるため、真に住宅に困窮している人以外も入居を希望しているのです。
 一方で応募倍率がゼロ倍、つまり応募のない住宅もあります。真の住宅困窮者であっても入居したくないような住宅は、つまりは社会的要請のない廃止すべき物件と言えるのです。
 抽選に当たれば恩恵にあずかることができ、外れればなし。一方で誰でも入居したいような充実した物件もあれば、誰も入居したくないような物件もある。本来福祉とは要請のある全ての対象者に対して必要充分な程度で平等に行き渡るべきものでありながら、市営住宅という福祉には、このように大きな不公平があるのです。
 また、入居の条件は政令月収額20万円以下ですが、その月収は現在の社会状況においては、自治体が住宅を供給してまで福祉の対象とすべき層とは言い難いでしょう。さらには、入居した後に月収20万円を超えれば明け渡しの対象となる「収入超過者」となりますが、あくまで、明け渡しの努力義務を負うにとどまるため、そのまま入居している実態があります。また、月収39.7万円を超えると、明け渡し義務を負う「高額所得者」となりますが、ここまでいけば、福祉の対象とは到底言えません。
 確かに、入居者の中には、市営住宅という福祉によって救済すべき真の住宅困窮者もいるでしょう。しかし、このように、到底真の住宅困窮者とは言えない入居の実態を、入居者以外の市民も当然気付いており、大変不公平に思っています。象徴的には、「市営住宅の駐車場に新車のメルセデスが停まっている」ことなどが、入居者以外の不公平感を煽っていたりもするのです。
 現に、国のほうでも、このような状況をふまえ、「収入超過者」や「高額所得者」の基準月収を引き下げることによって、真の住宅困窮者に公営住宅を供給するための公営住宅法の改正準備が進められていると聞いています。
 このように、市営住宅という福祉には、いろいろな意味での不公平性が存在しているのです。

 第六の問題点は、暴力団員の入居という問題です。
 本年4月、東京都町田市の都営住宅で、暴力団員が発砲して立てこもるという、許し難い事件が起こりました。本来、住民が団結して排除すべき対象である暴力団員を公営住宅に入居させているとすれば、本末転倒ということになります。特にこの事件のように他の住民に危険が及ぶようなことになれば、貸し主である自治体の責任が当然問われることになります。
 兵庫県の宅建協会の標準契約書の第9条、契約の解除の条項には、「借り主またはその同居人等が、暴力団と目される組織に属し又はこれに類する者、あるいは関係したものであることが判明した時、および組事務所又は類する場所として使用、もしくは使用が明らかな時」には、貸し主は催告をしないで賃貸契約を解除することができる、となっております。
 この標準契約書は一般的な賃貸物件の契約書としてほぼ共通で使用されており、このように暴力団には貸さないということは、民間の賃貸物件のごく一般的な規定として存在しているのです。
 しかし、町田の事件を受けた国土交通省の緊急調査によると、公営住宅のある1746自治体のうち暴力団組員の入居を条例や契約書で制限しているのは、広島、兵庫、福岡の3県と43市町村と、約3%にとどまっております。また、入居後に組員とわかった時に明け渡し対象としているのは、広島・福岡両県と33市町村で、市町村の半数は広島県内、と、取り組みは限定的なものです。
 現在、西宮市の市営住宅の入居に関する条例や契約書において、明確に暴力団員を排除する規定は存在しません。西宮市の市営住宅に暴力団員が入居する可能性が否定できないというのは、町田の事件を顧みれば、明確な問題点といえるでしょう。


「6つの問題点」の「2つの課題」への集約

 以上の、市営住宅という福祉に関する問題点は、二つの課題に集約することができます。
 ひとつは、コスト的な課題です。現状の10000戸をこのまま無計画に維持し続けるのは先ほど数値を示したとおり、現実的ではありません。適正量が何戸なのか、今後の修繕・建て替えはどのような計画に基づいて行われるのかを明確にしなければ、市営住宅は、今後の潜在的な財政課題として存在し続けることになってしまいます。
 もうひとつは、市営住宅という福祉の意義の問題です。住宅に困窮する低額所得者に対して安価な住宅を提供する、というのが意義であるとすれば、その意義にあわない入居者もたくさんいることになります。また、それが意義であるとすれば、その課題を解決するための福祉としては、住宅扶助がすでに存在していることになります。住宅扶助は抽選などによらず、支給すべき対象の全てに行き届く、公平な福祉です。公営住宅法の第3条には「地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならない」と定められておりますが、本市においては、低額所得者の住宅不足を緩和する必要があるような状況にはなく、わざわざ自治体がこのような大規模なハードを所有しなければ供給できない行政サービスの意義は何なのかが不透明であるというのは大きな課題だと言えるでしょう。

質問〜明確なビジョンの打ち出しが必要だ。

 このような状況をふまえて、質問いたします。
 まず1点。市営住宅という福祉の将来ビジョンの設計が急務だと考えていますが、それについて当局はどのようにお考えでしょうか。
 入居者の高齢化という現状や、公的扶助とのバランスのためには健康福祉局とのより深い連携が求められます。また、一方でコストを意識した計画が必要だという観点からは次期総合計画で明確にビジョンを打ち出す必要があるため、総合企画局との連携が求められます。
 都市局のみならず、当局全体で明確なビジョンを打ち出すべき重要課題であると考えておりますがいかがでしょうか。お答えください。

 第2点。「住宅に困窮する低額所得者」とは言えない入居者に関してお答えください。まずは、以下の4つの件数をお答えください。
明け渡しの努力義務を負う、月収20万円を超える「収入超過者」の入居件数は何件でしょうか。
・また、明け渡し義務を負う、月収39万7千円を超える「高額所得者」の入居件数は何件でしょうか。
・また、国の公営住宅法の改正によって、明け渡しの努力義務を負う「収入超過者」の月収が15万8千円になり、明け渡し義務を負う「高額所得者」の月収が31万3千円になる方向性が示されていますが、そうなった場合、それぞれの該当件数は何件になるのでしょうか。
 併せて、このような明け渡し努力義務を負う世帯、明け渡し義務を負う世帯、国の公営住宅法の改正によって新たに明け渡し対象となる世帯に対して市はどのような対応をしているのか、今後どのような対応をしていこうと考えているのか、お答えください。

 第3点。市営住宅からの暴力団の排除についてお答えください。
 まずは、本市の市営住宅において、暴力団員が名義人であるような入居の実態があるのか、また、それを把握できているのか、お答えください。
 次に、本市市営住宅の入居契約において、特に暴力団員の入居を防ぐ措置が為されていないように思いますが、この点に関して改善の考えはないものか、お答えください。

 第4点。市営住宅という福祉は、これまで述べてきたとおり、公平に運用されているとは言えない、矛盾をはらんだ福祉です。ならば、少しでも「真の困窮者」のためにこのサービスを提供する工夫が必要だと考えています。そのために、以下のような対策がとれないものか、お聞きします。
 まずは、住宅の募集に際して、国民年金だけで暮らしている独居老人などの、著しく所得が低く、自助努力の余地の少ない世帯に対しての優先枠を設け、募集を拡大するべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、公営住宅法第25条第1項に根拠を持つ特定目的公営住宅に関してです。同じ物件に複数の空室が発生した時くらいにしかできない「優先枠」という考え方にとらわれず、特定目的公営住宅という考え方を拡大すべきだと考えます。現在、西宮市の市営住宅においては特定目的公営住宅としては、高齢者・障碍者・母子世帯に関して設置していますが、この制度は他にも「著しく所得の低い世帯」なども想定しています。ならば、「高齢者・障碍者」を対象とした特定目的公営住宅の枠を拡大することと、「著しく所得の低い世帯」のための特定目的公営住宅を設けることに関してはどうお考えでしょうか。


答弁・それを受けた要望・意見〜市営住宅という福祉の将来ビジョンの設計について。

 市長が答弁者だったため、内容は非常に曖昧で、薄いものとなってしまいました。(※他市はどうかしりませんが、とにかく西宮市議会においての市長の答弁は内容がない。経営者が答弁するのだから、ビジョナリーで踏み込んだものになるのが普通だとは思うが…
 よって、自席からの要望で、肉付けすることになりました。
 ただでさえマンションの建設を野放しにしてきたことによって西宮が高層住宅だらけになっていっているのに、公営住宅が供給過多な状態になっているなどというのは、本末転倒です。少なくとも、震災前の量にまで量を絞るべきです。
 そのための財政計画が必須です。利便性の低い物件や、小規模物件、老朽化した物件は廃止するべきです。もちろん、ただ減らすだけじゃなくて、明確に著しく困窮している、かつ、自助努力の余地の少ない市民を対象とするものとして、適正に運用するべきです。
 そのために必要なのは、ビジョンの策定による明確な意義の定義であり、入居条件の審査を定期的に行って意義にあわない入居者に対して厳しく明け渡しを求めることです。
 審査を厳格にすることによって、住宅の入居者の回転をよくし、世襲占有や、入居条件に合わない占有を許さない環境作りをすることが大切です。
 メルセデスを買う金があるならば、まともに家賃を払って民間の住宅に住むべきです。こういった入居者を野放しにすることは、自助努力のモチベーションを削ぐ、大変無意味な福祉です。
 また、住宅の入居者の回転をよくしなければ、真にその福祉を必要とする市民に行き渡らないし、住宅の廃止が現実的なものになりません。条件に合わない世帯には次々を訴訟を含めた明け渡し措置を執っていただきたいです。
 次期総合計画で、本市の市営住宅という福祉の今後の運営ビジョンをぜひ明らかにして欲しいと要望させていただきます。


答弁・それを受けた要望・意見〜「住宅に困窮する低額所得者」とは言えない入居者について。

・明け渡しの努力義務を負う、月収20万円を超える「収入超過者」の入居件数
 →夫婦子ども2人の4人世帯では年収510万円以上:316件(4.6%)
・明け渡し義務を負う、月収39万7千円を超える「高額所得者」の入居件数
 →夫婦子ども2人の4人世帯では年収789万円以上:42件(0.6%)
・国の公営住宅法の改正によって、明け渡しの努力義務を負う、月収15万8千円を超える「収入超過者」の入居件数
 →374件(5.4%)
・国の公営住宅法の改正によって、明け渡しの義務を負う、月収31万3千円を超える「高額所得者」の入居件数
 →180件(2.6%)

と、かなりの件数に上ります。本年度から収入超過の区分/経過期間に応じて家賃を引き上げることになったので、自主明け渡しが進むことを期待していると、答弁されました。高額所得者については、文書通知のみならず、明け渡し訴訟を見据えて厳正に対処しているとのことです。


答弁・それを受けた要望・意見〜市営住宅からの暴力団の排除について。

 まず把握は完全にはできていないが、今後とも警察との連携を密にしていくとの答弁でした。
 本年6月1日付の国の通知によれば、自治体は暴力団員には入居決定しないことを周知し、暴力団員でないことを確約する書面の提出を求め、暴力団員であることが判明したときには、明け渡し請求自由に街頭となる旨を書面により通知するべきだとしているそうです。これを受けて、まずは、本年10月の募集時より、入居申し込み案内書に「暴力団員は申し込み資格がない」ことを明記し、条例等の整備の検討を進める、と答弁がありました。
 しかし、一方では現実的には破門された元組員や、構成員と同じくらいいるとされている準構成員などに関しては、条例や契約による排除は難しいという現実もあります。この問題に関してもどのような対策ができるのか、警察と研究を進めて欲しいです。


答弁・それを受けた要望・意見〜真の住宅困窮者のための市営住宅行政について。

 特定目的住宅の枠拡大や、「高齢者でかつ超低所得者世帯に対する特定目的住宅」の創設などについても検討をしたい、なるべく早期に実施したい、と答弁がありました。
 一方で入居者の高齢化という現状があります。さらに、団塊の世代の大量高齢化時代に向け、市営住宅の入居資格者の定義を見直して高齢者・障碍者のウェイトを高め、福祉と連携したシステムを創造するべきだと要望しました。
 これからニーズがあるだろう公営住宅による福祉政策の一例の提案としてアイデアをひとつ提案しました。
 →利便性の高い物件は、高齢者・障碍者向けの物件と指定するというのはいかがでしょうか。その物件には、シルバー住宅と一般世帯が一定程度混住し、一般世帯にはボランティアが義務づけられるというのはどうでしょうか。一般世帯は、市住に入居できる代わりに共用部の清掃や高齢者の見守り活動、緊急通報への対応などを行うのです。今後、行政が単独で高齢者福祉を提供していくことに限界がくるでしょうから、自治的に高齢者福祉が行われる福祉ユニットとして実験的におこなってみてはどうでしょうか。
 要は福祉として対応すべき対象にきちんと市営住宅が供給されるべきだ、と考えているのです。


追加の提案〜「改良住宅」という不公平

 公平性の観点から、改良住宅というカテゴリーの廃止を提案しました。住環境の改善という役割を終えた今、完全に同じ条件の市営住宅として扱われるべきです。現に一般募集もしていて、そこそこの倍率になっています。
 そのため、市営住宅では徴収しておきながら、改良住宅では徴収していない「共益費」を改良住宅でも徴収すべきです。「共益費」は、年間3500万円も一般財源から支出されていて、それこそ不公平な福祉だと言えます。


結論〜次期総合計画に、明確な公営住宅行政のビジョンを。

 とにかく、この質問で訴えたかったのは、市営住宅という福祉行政に関して明確なビジョンを打ち出し、真の対象者であるべき対象者がその恩恵にあずかることができる、公平で持続可能な福祉として再構築するということです。
全般的に前向きな答弁が返ってきましたので、今後の当局の施策を見守りたいと思います。

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