無防備地域宣言をすることができない

  1. 無防備地区の条件が満たされない
  2. 赤十字コメンタールにより宣言できない
  3. 自治体は自衛隊との交渉ができない
  4. 政府の解釈により宣言できない

無防備地区の条件が満たされない

[ジュネーブ条約第1追加議定書第59条]

  1. すべての戦闘員並びに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること。
  2. 固定した軍用の施設又は営造物が敵対目的に使用されていないこと。
  3. 当局又は住民により敵対行為が行われていないこと。
  4. 軍事行動を支援する活動が行われていないこと。

無防備地域宣言を宣言するにはジュネーブ条約第1追加議定書第59条を満たす必要がある。しかし、地方自治体がこの条件を満たすことは不可能である。

  1. すべての戦闘員並びに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること。
    →戦闘員や移動可能な兵器・軍用設備の撤去については、地方自治体ではなく国に管轄の権限がある。
  2. 固定した軍用の施設又は営造物が敵対目的に使用されていないこと。
    →軍事施設の使用権限は(1)同様、国に管轄権がある。また日本政府が有事の際、軍事施設の使用の中止をする可能性は非常に低いと考えられる。
  3. 当局又は住民により敵対行為が行われていないこと。
    →日本が侵略を受けた場合、パレスチナのインティファーダ(注)のような、住民による自発的なパルチザン・レジスタンスが起きる可能性がある。住民による敵対行為を条例で防ぐことは非現実的である。

    (注)インティファーダ・・・〔アラビア語で住民蜂起の意〕ヨルダン川西岸地区およびガザ地区での,イスラエルの占領に対するパレスチナ住民の抗議運動。

  4. 軍事行動を支援する活動が行われていないこと。
    →前述の国民保護法・武力事態対処法により、地方自治体には協力責務がある。例えば自衛隊の戦車等の軍事兵器が他市に移動するために西宮市を横断する際、西宮市は協力責務があり、拒否する権限をもたない。

赤十字コメンタールにより宣言できない

赤十字国際委員会コンメンタール(解釈集)

'Who must send the declaration?'

2283 In principle the declaration must be sent by the authority capable of ensuring compliance with the terms of the declaration. In general this will be the government itself, but it may happen that in difficult circumstances the declaration could come from a local military commander, or even from a local [p.704] civil authority such as a mayor, burgomaster or prefect. Of course, if the declaration comes from a local civil authority, it must be made in full agreement with the military authorities who alone have the means of ensuring that the terms of the declaration are complied with.


誰が宣言を出さねばならないのか?

2283 原則として、宣言はその内容を確実に遵守できる当局によって発せられるべきである。一般的にはこれは政府自身となるであろう。困難な状況にあっては、宣言は地方の軍司令官、または市長や知事といった、地方の文民当局によって発せられることもあり得る。もちろん、地方の文民当局が宣言する場合は、宣言内容の遵守を確実にする手段を唯一持っている、軍当局との全面的な合意のもとになされなければならない。 (西宮市訳)

赤十字国際委員会が発表したコメンタールを読めば、宣言主体は政府にあり地方自治体にはない。地方自治体は「困難な状況」にあって初めて宣言主体になる。「困難な状況」とは原文では "difficult circumstances" である。"difficult" は英語の意味としては「難しい」の意味の語彙であるが、含意としては、「あらそいごと」「いさかいごと」と言う意味もある単語である。つまり "in difficult circumstances" は、そのまま「有事に於いては」と訳すのが最も正確であり、「困難な状況」=「紛争状態、有事」を指しているととるのが、最も正確だと言える。「紛争、有事」状態で無い現在の宣言主体は政府である。

※ 2005-08-31 追加

> コメンタールの「困難な状況にあっては」についてですが、
>「有事に於いては」=「政府が存在しない状態」にあたる、
> というロジックが不足しています。

という内容のご指摘がありましたので、この件についてお答えします。

国際赤十字のコメンタールには、
「困難な状況にあっては、宣言は地方の軍司令官、または市長や知事といった、地方の文民当局によって発せられることもあり得る。」
と記載されていますが、その前の文章には、
「原則として、宣言はその内容を確実に遵守できる当局によって発せられるべきである。一般的にはこれは政府自身となるであろう。」
と記載されています。

これは、「当局が宣言を発することができない場合」という前提があって初めて「地方自治体によって宣言を発することができる」と解釈すべきです。

また、「当局が宣言を発することができない場合」とは「政府が存在していない状態」もしくは「機能していない状態」であると捉えるのが最も適切であると考えます。

自治体は自衛隊との交渉ができない

コメンタールには "it must be made in full agreement with the military authorities" とあり、西宮市の制作した訳によると、「地方の文民当局が宣言する場合は、軍当局との全面的な合意のもとになされなければならない」とある。しかし、上記した国民保護法・地方自治法・武力事態対処法に抵触してしまう以上、自衛隊が地方自治体と全面的な合意を結ぶことはない。

政府の解釈により宣言できない〜政府の公式見解〜

国立市長による「無防備地域宣言が自治体にも可能ではないか?」という趣旨の質問に対し、2004年6月24日の公式回答で首相官邸の公式見解として、

ジュネーブ諸条約第1追加議定書において

特別の保護を受ける地域として規定されている「無防備地域」について、その宣言は、当該地域の防衛に責任を有する当局、すなわち我が国においては、国において行われるべきものであり、地方公共団体がこの条約の「無防備地域」の宣言を行うことはできないものである。

と回答している。このことからも、地方自治体は無防備地域の宣言が不可能だと言える。