無防備地域宣言とは何か

無防備地域宣言とは

有事の際、紛争国の「適当な当局」が、管轄下の地域を非戦の地域とし(当該地域が無防備であることを宣言する)、それを相手国に通知します。その結果、その地域に対する攻撃は禁止され、住民の生命・財産が戦火から守られるというものです。

この「無防備地域宣言」は、国際法である「ジュネーブ条約第一追加議定書」の規定に根拠を置きます。

「無防備地域宣言」の基となる条約

「無防備地域宣言」は、「ジュネーブ条約追加第一議定書」に規定されています。

(「ジュネーブ条約追加第一議定書」とは、国際紛争下における文民の保護について定めた人道法です。)

この条約の第59条1項・2項に以下のようなことが書かれています。

  1. 有事 ( = 戦争状態) に突入したとき、「適当な当局」が「無防備地域宣言」をすることができる。
  2. そのとき、「適当な当局」は、管轄している地域を無防備状態にしなければならない。
  3. 同時に「適当な当局」は、「無防備地域宣言」したことを相手国に通知しなければならない。
  4. これで、その地域への攻撃が禁止される。

この「ジュネーブ条約第一追加議定書」には日本・中国・ロシア・韓国・北朝鮮、主要先進国のほとんどの国が締約してます(アメリカを除く)。締約している国には、この条項を守る義務があります。つまり、無防備宣言をしている地域を攻撃すると、国際法違反ということになり、国際刑事裁判所に裁かれることになるのです。

条文の詳細

ここで、条文の詳細を確認しておきましょう。

つまり、59条の1項・2項には、紛争国の「適当な当局」が、管轄下の地域を非戦の地域とし、それを相手国に通告すると、その地域に対する攻撃が完全に禁止されると規定しているのです。

【補足I】ジュネーブ条約の全体像

ジュネーブ条約とは、戦争(武力紛争)に際し、戦闘行為に参加しない民間人・戦闘行為ができなくなった人々(捕虜、傷病者など)の保護を目的として作られた条約です。

1864年に、赤十字国際委員会の提唱により、スイスのジュネーブで16カ国の外交会議が開かれ、戦地における戦傷病兵の救護・救護者の中立性保護を規定した条約を結んだのが始まりで、以来、3度改訂されています(3度目は1949年)。現在、ジュネーブ条約は以下の4つの条約をまとめたものを指します。

  1. 戦地にある軍隊の傷者等の改善に関する条約(別名: ジュネーブ第一条約・傷病者保護条約)
  2. 海上にある軍隊の傷者等の改善に関する条約(別名: ジュネーブ第二条約・難船者保護条約)
  3. 捕虜の待遇に関する条約(別名: ジュネーブ第三条約・捕虜条約)
  4. 戦時における文民の保護に関する条約(別名: ジュネーブ第四条約・文民条約)

この四つの条約を総称して「ジュネーブ四条約」とも言われます。

第二次世界大戦後、国家間の武力紛争よりも国内で起こる武力紛争、すなわち内戦や植民地独立のための紛争が数多く起こりました。これらの武力紛争における犠牲者の保護は、1949年のジュネーブ四条約においては、非常に限られたものだったので、ジュネーブ四条約を補完する条約を制定する必要が出てきました。そうしてできたのが、1977年に制定された二つの追加議定書です(以下に示します)。

  1. 国際武力紛争の犠牲者の保護に関し、1949年8月12日のジュネーブ諸条約に追加される議定書(別名: 第一追加議定書)
  2. 非国際武力紛争の犠牲者の保護に関し、1949年8月12日のジュネーブ諸条約に追加される議定書(別名: 第二追加議定書)

国際武力紛争とは、最低2カ国間の軍隊の間における争いを意味します。非国際武力紛争とは、ある国の領域内での、正規の軍隊と武装集団の争い、あるいは武装集団同士の争いを意味します。

以上の、1949年のジュネーブ条約と1977年の追加議定書(合計でおよそ600条からなる)は、国際人道法を構成する主な条約となっています。

【補足II】現在、ジュネーブ条約に加入している国は?

2005年3月現在、国連加盟国が191カ国である中、ジュネーブ四条約締約国は192カ国となっています。第一追加議定書については162カ国、第二追加議定書については158カ国が締約しています。

現在、主要先進国でジュネーブ条約追加議定書に加入していない国は、アメリカ合衆国だけです。なお、日本の周辺国では、中国・ロシア・韓国・北朝鮮なども加入しています。

ジュネーブ条約の加入国一覧: http://www.jrc.or.jp/about/humanity/join.html